約10年前に努めていた会社は「サブプライム危機」の直前にサブプライムに全く関係なく不景気になった。
当然社内の雰囲気は悪くなり、社員の効率性も落ち、程なくして給与の遅延が発生し始めると続々と社員が退社し始め、役員達は粗暴になり、恵比寿のど真ん中にあった弊社ははビルのまわりが洒落ていたにも関わらず、フロアに入れば借金取りや下請け会社の社長の怒号が聞こえてくるという、戦後の混乱期の闇市のような様相を呈してた。
今回はそんな混乱期の中にあった時の、当方の携帯電話のお話。
弊社はその頃、先述のように超絶景気が悪く、まさかの給料の遅延が2ヶ月ほど発生していた。
にも関わらず、他社に景気が悪い事を悟られないよう「対外的に好景気をアピールしていた」為、仕事で関わることになったグラミー賞歌手の「アリシア・キーズ」から「世界には困っている人が沢山いるので、皆様も募金をお願いします」と我々社員がお願いされて困惑したり、更に給与遅延が2ヶ月半にまで伸びた頃、会長が「隅田川花火大会で3尺玉を広告付きで打ち上げた」りと、今振り返っても「社員の気持ちを逆なでし、社員全員の不快指数は絶えずMAXという状況であったと記憶している。
そんな時に当方が属していたのが「埼玉の超僻地の某所」。 通勤時間は自宅からドア to ドアで約3時間半、いまから10年ほど前に一時的に連邦が復活したのは、この通勤時間があまりにも暇だったからというのが、その理由だったりする。
しかしドア to ドアで40分の本社は、毎日地獄の釜の蓋が開きっぱなしな超鉄火場状態。
そして当方のいる埼玉の僻地は、お客さんもいなければ、債権者の怒鳴り込みなどは全く無かったので「近くの地獄より、遠くの天国」という事から、この僻地任務を希望し、そして「よほどの要請」がかからないかぎり、本社に出向く事はまず絶対になかった。
なので本社と当方の連絡方法は主に携帯電話。 メールも存在していたが、内容は往々にして「いそぎの用事があるので電話をしてよいですか?」という、錯乱しているとしか思えない内容だったので、メールとしての意味は壊滅的になかった。
そして当社は、先述のように給与の遅延が発生している。 当然、社員どころか、銀行、債権者、取引先、古風な絵画が身体に描かれている方々や、謎の外国人など、あらゆる所に不払いが発生しており、本社では様々な方が、怒り、脅し、泣き叫び、呆れ、怒鳴って暴れるなど、人間の本質と本能が入り混じり、本社の通常業務は 停止寸前までになっていた。
そして当然、上層部は荒れに荒れていた。
上層部は怒りのはけ口を、自分より立場の弱い本社の社員に向け、結果少なくなった社員は脱兎の如く退社し、少くなくなった社員は更に少人数に。
更に悪い事は続く。 本社が新しく雇った中国人社員が、アドビ&マイクロソフトのコピーを「中国ではみんなやってる」という理由でばら撒き、あげく会長の言われるがままに「リース品のパソコンを秋葉原の某中古店に売る」という暴挙にでて、もう手がつけられない状態になっいた。
また埼玉某所では「サブプライム危機のあおりを受けて倒産した会社の遺留品」を弊社役員が「これ会社からの気持ちだから持っていっていいよ」と謎の現物支給し始めるというありさま。
そして、この負のスパイラルの断片は、「お客様がいなくて暇なのに、作業が作業なので辞めさせられない」というポジションにあった当方のところまで届き、電話がダイヤルQ2時代のテレクラのように鳴るようになり、当方は携帯電話の着信音の振り分けけを以下のようにするに至る。
会長…地獄の黙示録 代表取締役社長…帝国軍のマーチ 他部門の役員…弦楽のためのアダージョ(プラトーン)
どの電話に出ても地獄が待っていたが、サラリーマンの給与の半分は我慢代という事で耐え忍んでいたし、他の社員が当方の着信音を聞いて「ベイダーから電話きましたよ」とか「はい、エリアス死んだ〜」と言って慰めてくれていたので、なし崩し的に退社して数日間まで、この着信音を使い続けていたような記憶がある。
そして退社した二日後、カーツと、ベイダー卿と、ベトコンから「なんとかしろ!いや、なんとかならないですかね…」という壊滅的な大事案が発生するのだが、それはまた今度の機会にでも。
そんな地獄を経験した当方の現在の着信音は「呼び込みくん」。 スーパーの野菜コーナーやドン・キホーテの台所用品コーナーで再生されている、日本で一番ヘビーローテーションされていると思われるやかましいミニマル・ミュージックと言えば「ああ、あれ…」と思い出す人は多いと思う。
https://www.youtube.com/watch?v=b7pzTtrnUyc 呼び込みくん。
この着メロを使っている理由は「もう二度と、あの時のような状況を繰り返してはならない」という、いわゆる「戦争を二度と繰り返してはならない」的な戒めであったりするが、これを聞いた第三者的には「ただのドン・キホーテが好きなおじさんの着信音」にしか聞こえないらしい。
きっと彼は小学校の国語の問題で「この文章を考えた時の作者の気持ちを述べなさい」という問題で「締切が間に合わなくて死にそう」と見当違いな解答をした人間だと思う。
そんな訳で、今回は「呼び込みくん」をトランス & 90年代風の音楽にリミックスした音源を公開しているサイト「呼び込ンピ & 呼び込ンピ+」をご紹介。
こちらのサイトでは皆様お馴染みの「呼び込み君」を「トランス」、「ゴア」、「アンビエント」、「リスニング音楽風」など様々なバリエーションでカヴァー。
そしてそれら音源を太っ腹な事にMP3形式で全公開しているので、通勤中やドライブ中が街のスーパーになる事は請け合い。
なお余談ではあるが、この携帯呼び出し音が公園などで鳴り響くと、ベンチに座って休んでいる老人だろうが、ポケモンGOに夢中になっている老人だろうが、徘徊して市内放送で通報されていると思われる老人も皆「何がおきたんだ?、空襲か!!」という感じに背筋を伸ばしてまわりを見回したりするので、シケ感じの日常を過ごしている方は是非とも「呼び込み君」をご活用あれ。
そんな訳で、年に一度は「呼び込みくん」をヤフオクで検索して購入を検討してしまう方や、定期的に「誰か呼び込みくんをサーキットペンディングしてないもんかねぇ…」と検索してしまう方、携帯電話の呼び出し音を呼び込みくんにしていたら、スーパーの中で着信に気づかないで超怒られたことのある当方みたいな方などは、こちらのサイトにある音源を聞きながらドライブでもしてみてはいかがでは。
追記…最近「ザ・スライドショー」を横浜体育館に観に行った時のこと、開演前の客入れで「呼び込みくん」を延々ならしていたので「流行ってんのかな、コレ?」と、ちょっとだけ思った。
| |